魚三楼 (京都・伏見)歴史に思いを馳せながら食す日本料理のグランメゾン ☆☆
有り体に申し上げれば、レストランに行く理由を料理単体のみに見出すのであれば、
当店より美味しいお店は一杯あるのだろうと思います。
しかし、レストランにそれ以上のプラスアルファを求めるのであれば
昨日今日できた凡百のお店では到底敵わない奥深さを当店は提供してくれると思います。
数寄屋造りの建物、お庭の佇まい、世紀を超え集められた器や軸等々
日本文化の集積をここ魚三楼に垣間見ることが出来ます。
割烹と異なり料亭というジャンルの日本料理店を作り商いを営むには膨大な費用と労力を要します。
割烹がカウンターやテーブル主体であるのに対して、料亭は個室が基本、さらにお庭もあったりします。
それぞれの個室やお庭を日々綺麗に設えるだけでも大変です。。
また、それなりの割烹であれば器に拘りを持っているお店も多い思いますが、
料亭の場合はそれは当然のこと。
加えて季節ごとの掛け軸やお花をお部屋ごとに用意しなければなりません。。
更に申し上げれば、小さな割烹であれば極論本来料理人であるお弟子さんがサービスを兼ねることが可能であるのに対して
料亭では各個室に仕出しをする専属のサービスマン、即ち仲居さんが複数必要となります。
喩えるならば、料亭は日本料理店のグランメゾン、と言ったところでしょうか。
イニシャルコストだけではなくランニングコストも割烹とは比べものにはなりません。
京都駅から南に位置する全国の稲荷神社の総本社、伏見稲荷大社を更に南に下り
往時の「鳥羽伏見の戦い」では店先で新撰組と薩摩藩の銃撃戦が行われたというのが
創業250年、江戸時代には各藩の料理方を努めた料亭、魚三楼さん。
グランメゾンをかくも長期に渡り営むレストランなんて東京は勿論、ヨーロッパにもないのではないのでしょうか!?
比肩しうるのは瓢亭さんをはじめとする京都の数店のみかと存じます。
というとなんだか敷居の高い、スノビッシュなお店のような先入観を持ちそうですが、
それは杞憂に終わります。
店主をはじめお店の皆さんはとても親切で腰が低い。
わからないことを訊けば過不足なく懇切丁寧に教えてくれます。
海外のミシュラン店で修行してなんちゃら~のようなフランス料理店にありそうな慇懃無礼なサービスではないのでご安心を。
かなりの大箱(100席以上!?)を考えると凄いことだと思います。
<幸せの一皿>
お椀 蛤の真丈。うぐいす菜、金時人参
まずはそのまま吸い地をいただく。淡い。
次に吸口の木の芽を吸い地に泳がせ一呼吸置いてからもう一度吸い地をいただく。
と、雑味のないクリアな出汁の後に木の芽の香りが微かに鼻孔に残る。
真丈を割って頬張れば今度は海の香りを強く感じ、
合間にうぐいす菜、金時人参を口にしつつ、
吸い地を飲み干す頃にようやく全体の輪郭を理解する。
実に日本料理らしい逸品。
お店のある伏見は昔から酒処。すなわち水の美味しい地域。
当店も料理にはすべて敷地内の井戸水を使っている、とのこと。
どんな都内の名店もこうした地の利には勝てません。。
<お品書き>
まずは一服。胃に優しい。
八寸
筍の木の芽和え、車海老、このこ入りの蕗、桜の葉で包んだ鯛寿司
すっぽんの玉締め トリュフの餡かけ
すっぽんのスープと鶏卵で作られた茶碗蒸し。
当店のスペシャリテ!?具には刻んだすっぽんの身。
伝統を守りつつそれに甘んじない一品。
向付
鯛とマグロと紋甲烏賊
お椀
蛤の真丈。うぐいす菜、金時人参
煮物
若竹煮、グリンピース、わかめ、木の芽
春の代表的味覚、筍。旬にはまだ早いものの、えぐみも少なく微かに甘い。
出汁もほどよく含まれていて美味しい。
焼き物
鱒の酒盗焼き 畑菜の胡麻和え
鱒そのものより酒盗の味がかなり強いく辛い。残念。。
酢の物
三宝柑の器の酢の物
炙ったホタテとサヨリ
揚げ物
筍、ウド、コゴミ、アスパラガスの天ぷら
春の息吹を感じる品々。いずれも香り高し。
お食事
鯛と筍のご飯
焼き物とは対象的に淡い味つけ。しみじみと美味しい。
食べきれないものはお土産に。翌朝改めていただいても美味しゅうございました♡
止椀はごま豆腐の赤味噌
水菓子
左:三宝柑のゼリー
右:フルーツゼリー
菓子
総本家 駿河屋のうば玉
黒糖にこしあん。この後のお薄のためにあるようなお菓子でした。
駿河屋さんとはご近所付き合いだそう。
お薄
実に贅沢な時間を過ごさせていただきました。
フレンチやイタリアンのグランメゾンに何度も伺うのであれば、
日本人として当店のようなお店にも一度は伺っておきたいものです。
魚三楼
075-601-0061
京都市伏見区京町3-187
http://www.uosaburo.com/